捨てることが
当たり前になっている食品ロス
Withでは、デジタルツールが進化する中で高知県内の企業に向けて、ネットショップの運用など、ソフト面も含めてデジタルマーケティングツール全般の支援をしてきました。その延長線上で、全国のスーパーマーケットに向けて、マーケティングDXを推進しています。チラシなどの販売促進、企業説明会などの採用活動をデジタル化することで、効率と効果を高めて行こうと、デジタル化推進を支援をしてきました。
その中で気づいたのが、スーパーの“常識(当たり前)”であり、お金や資源が無駄になっている食品ロスです。「全国のスーパーで、閉店後や開店前に廃棄される食品ロスは年間で約1,000億円。もともと設定していた価格を下げることにより、本来得られるべき利益が得られない『値引きロス』も含めると、年間で約4,500億円にもなります。これは、スーパーの年間売り上げの4.5%。経常利益は1.7%なので、利益より廃棄が多いというすごいことになっています。しかし、これは『計画ロス』といって、あらかじめ棄てることを見越した計画になっています」と須江勇介社長。
この食品ロスはなぜなくならないのでしょう。須江社長は「スーパーでは、発注をギリギリにして、手前、手前で値引きして食品ロスをなくそうとしています。それでもロスはなくならない。最後は何なのだろうと考えると、消費者が陳列されている商品を、少しでも鮮度の高いものを求めて、手前にある古いものを避けて陳列されている商品を後ろから取ります。家庭では“古いものから食べなさい”と言うけど、スーパーに行くと、新しいものを選んで買っています。家庭でも食べ切れる量を作るとか、古いものから使っていくなど、家庭の意識レベルで変わっていかないと食品ロスはなくならない」と話します。

楽しみながら食品ロスをなくしていこう
「手前から買いましょう」と言ったところで誰も変わらないし、押し付けられても面倒という問題を、楽しくクリアするために誕生したのが“もったいない”の妖精「もぐにぃ」です。そして「捨てる常識(当たり前)を棄てる」というキャッチフレーズで『もぐもぐチャレンジ』という活動がスタート。コンセプトは「楽しみながら、気がつけば食品ロスがなくなっている取り組み」として、割引シールを貼る前に『もぐにぃシール』を貼り、このもぐにぃシールを貼った手前の商品から買っていただけるようにしています。もぐにぃシールを10枚集めて台紙に貼って応募すれば1回抽選ができるというのがもぐもぐチャレンジの全体的な流れです。
この活動は全国に広がり、高知ではサニーマートやサンシャイン、愛媛県ではセブンスター、東京や関東周辺ではサミットやカスミ、広島のイズミなどで実施。大手チェーンを含めて、現在も5社ほど導入の準備をしてくれているそうです。「昨年(2020年)12月の段階で100万シールの回収ができましたので、100万個の食品ロスが免れたとも言えます」と須江社長。この取り組みもまだ発展途上で、抽選で特典がもらえたり、シール1枚を1円と換算して寄付できたり、抽選回数を記録して、より多く抽選してくれた方には事務局から景品をプレゼントする仕組みなどを盛り込んだアプリを、2021年9月を目標に展開していく予定だそうです。
スタッフの岡林さんも「キャンペーンで店舗に行かせていただいたときも、もぐにぃに手を振り『シールを集めています』という声をいただきました」と、もぐにぃ人気の高まりを実感しています。
もう一つの取り組みは、四万十町と協定を結び、子どもたちに対して食育の活動をしています。保育園に訪問して紙芝居を読み聞かせして「作ってもらった食事を好き嫌いなくちゃんと食べようね」だったり「食べ切れる量の食事を作ろうね」をいうことを教えるようにしています。須江社長は「子どもたちが大きくなった10年後には食品ロスがほぼなくなっている世の中を目指した取り組みです」と教えてくれました。
困難な目標も
スタッフたちと乗り越えて実現に
食品ロスはSDGsの「12.つくる責任 つかう責任」や「1.貧困をなくそう」をはじめとし、17の目標全部に関わること。「余るのが美意識」という意識を変えて、「捨てない」ということに取り組むことがSDGsにつながっていきます。
「♯お弁当でつくる未来」という事業は、つくった弁当の写真を1枚SNSに投稿したら、10円が緑の募金に寄付され、植林に使われるという事業です。弁当は残り物をつかうと家庭でのロス削減につながり、容器も繰り返し使うため廃プラの削減につながります。「なにより頑張ってつくってくれたお弁当は、お腹と心を満たす優しさが詰まっています。食べる人も、言葉に出すのは恥ずかしくても、みんなが「ありがとう」の気持ちを持つだけで、優しさの連鎖を巻き起こす事ができます」と須江社長。
これらの食品ロス削減の事業のほとんどが、まだ利益を度外視した事業で、社会貢献活動として広げていき、やがては自立して、採算がとれるようにしていきたいと考えているそうです。
もぐにぃの事業がスタートしたのが2019年2月。前職は美容師で、入社歴はまだ浅い岡林さんですが「相手が求めていることに応え、周りを変えていくという中で、自分が何を楽しんで出来るかという部分がすごくやりがいだと思っています」と笑顔で話してくれました。一方、須江社長は「基本的に弊社はみんな未経験で入社し、弊社で育てていくというのが基本スタンス。自分たちをエンターテインメント企業だと思っていますので、何か課題があれば自分たちのコンテンツの力や、クリエイティブの力で解決できるのだったら、なんでもやっていこうと思う柔軟なメンバーが弊社には多いと思います」と、自らのスタッフたちをそう評価しています。
食品ロスの削減とは身近なテーマですが、取り組みには常識の壁やフィールドの大きさなど困難な事柄が多く待ち受けています。しかし、須江社長は「日本のスーパーが約2万店あるんですけど、そのうち1万店舗に食品ロス削減の推進事業導入を目指しています。これが中期目標で、長期的にはこの取り組みを世界に広げられたら夢のようだなと思っていますが、弊社スタッフみんなで共通認識をもって目標を目指していけば実現できると思っています」と、ご自身と、Withの未来について熱く語ってくれました。
有限会社With
2005年5月にWebインテグレーション事業創業、同9月に法人設立。2008年4月にWebマーケティング事業、2009年6月にECサイト運営事業開始、2010年6月にインターネット広告事業を開始し、2011年4月には統合デジタルマーケティングへと領域拡大。2019年2月に食品ロス削減事業を開始する。
代表取締役 須江勇介
1983年に愛知県名古屋市で生まれ、東京都、高知県で育つ。韓国への留学、東京都でのエンジニアを経て、2005年にWithを設立。デジタルマーケティングのプランニング&最適化領域を最も得意としている。
