SDGsを柱とした企業経営を進め
環境と地域と共生できる建設会社に

 高知県内外を中心に舗装・土木・建築などの建設工事に取り組むミタニ建設工業。その一方で、代表取締役社長三谷剛平氏が牽引して、SDGs(持続可能な開発目標)を柱とした環境保全や地域との関わり、防災・安全、健康経営などや絵本の制作、読み聞かせなど、ユニークな活動に取り組んでいます。その取り組みについて三谷社長と、スタッフの中村美穂子さんにお話をお伺いしてみました。

エコアクション21から、
公式キャラの誕生で
活動の幅が大きく広がる

 「持続可能な社会の実現に向けて、地球環境に配慮した建設会社を目指します」という経営理念のもとミタニ建設工業では、2011年2月にエコアクション21を認証・登録しました。環境省が策定したガイドラインに基づき、独自の環境マネジメント・システムを構築し、改善していくことで、環境保全はもとよりコストダウンにも繋がり、そして地域の方に愛される建設会社になれればという思いで取り組まれています。

 「私たちは本業でいかに環境配慮するかということに重点をいています。弊社では着手前検討会を実施し、その中で環境に関する問題点や工法、創意工夫などの意見を出し合い、さらに周辺環境や地域性を踏まえた環境活動も行っています」と三谷社長。

 ミタニ建設工業の公式キャラクター『やいろちゃん(独自HP https://www.yairochan.com)』が誕生したことで、社会貢献活動は大きく広がりを見せ、高知県の森が舞台となっている絵本『やいろちゃんのもり』も誕生しました。テーマは環境、防災、共存となっています。高知県の森林率は84%と日本一です。高知県は「山と川と海しかない」とマイナスに捉える人もいますが、森林が多いと、川や海からの恩恵も大きく、また、CO2の吸収率も高く、温暖化防止の役割も担っています。近年は林業分野が衰退したり、過疎化で手入れする人が不足したりと、手入れされない森が多くなってきています。手入れされなくなった森では、台風や大雨で土砂崩れなどの被害を受けたり、生態系が崩れたりと、さまざまな問題が起きています。太陽が当たるように間伐したり、道を作ったりして森を整備することで、安全に暮らすことができます。環境、防災の両側面で建設業の果たすべき役割は重要なものと言えます。

 絵本の読み聞かせに出向くスタッフの総務部・広報・ブランディング担当の中村美穂子さんは「森を守ることは、自分たちを守ることにつながります。絵本を読んで、環境や防災に興味を持ってもらいたいという思いから絵本『やいろちゃんのもり』を作成しました。そして保育園や幼稚園、小学校などでの『読み聞かせ』の活動に広がっています」と言います。この活動の広がりに「おもしろければいいかな」と三谷社長も笑顔で答えてくれました。

高知県内で他の企業に先駆けてSDGsを事業の柱に

 ミタニ建設工業が、SDGsについて社員に向けて発信したのは2018年10月25日発行の『月間ミタニ新聞』という社内報がスタートでした。SDGsとは持続可能な開発目標のことで、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。

 同年12月下旬には地元新聞にミタニ建設工業がSDGsに貢献するさまざまな取り組みを紹介する新聞広告を掲載しました。これらの取り組みのきっかけを三谷社長は「高知県南海トラフ地震対策優良取組事業所や健康経営優良法人など、当社は他社よりもいち早く認定を受けました。私の性格が他より一番先にやりたい性格だからでしょうか。当時はまだ高知県内ではSDGsが話題に登ることは少なかったと思います。ところが関東へ出張に出かけると、街でSDGsのマークやロゴをよく見かけましたし、2018年の高知家ピンバッジがSDGsのピンバッジに似ていることから“SDGsですか”と聞かれたこともあります。また、全国情報が多く載っている日経新聞では、さまざまな取り組みやフォーラムの開催情報などが掲載されていました。『これはSDGsの大きな流れがくる』と思い、いろんな本を読み始めました」と話してくれました。

 三谷社長は「SDGsの取り組みは、人々のつながりが希薄な都会よりも、相互扶助の精神が残っている高知・田舎の方が向いている」との思いとともに、「エコアクション21で取り組んだ環境活動や、今まで取り組んできた健康増進、防災・減災、地球環境問題、働きやすい環境づくり、CSRでやってきたことの延長線上で取り組める」との思いから、ミタニ建設工業の取り組みの柱の一つにSDGsを組み込んだのです。これも「日本の企業は何事も100%完璧に準備しなければ取り組めない。でも、アメリカの企業などは、完璧ではなくても取り組みを始め、その取り組みに共感する市民活動、経済活動、政治活動がちゃんとリンクしていく」と「感じたことを行動に移すことが大事」だとの考えによるものからでした。

SDGsの取り組みを
分かりやすく広げていく
絵本の制作

 SDGs推進の取り組みの一つが2020年9月29日に発行した『SDGsの絵本』の発売です。作者は三谷社長。絵は絵本作家、永井みさえさん。英訳は紙谷朋晃氏、Justin D.Milburn氏が担当しています。この取り組みは、SDGsの目標4「質の高い教育をみんなに」に対応し、4-7「教育を受けるすべての人が、持続可能な社会をつくっていくために必要な知識や技術を身につけられるようにする」ことを目指しています。この絵本を高知県内の小学校に寄付し、保育園や小学校での読み聞かせ会の実施、小学校や中学校への出前授業などを行っています。読み聞かせにスタッフとして参加した中村さんは「毎回、色んな発見があって楽しい。子どもたちから学ぶことも多い」と言います。三谷社長は「出前授業ではSDGsについて初歩の説明をする学校から、すでに勉強して十分な知識があり、高度な質問をしてくる学校まで、レベルはさまざまですが、環境と建設業のつながりなど、楽しく学んでもらいたいと思います」と話してくれました。

今後ミタニ建設工業では、You Tubeで、SDGsについて質問をして面白おかしく進行するバラエティー番組『それってなんなが!?』を、4月公開のスケジュールで制作していく予定とのことです。三谷社長は「これからはミタニ建設工業の事業が環境にどう影響を及ぼすのかだけを考えるのでなく、環境問題を解決するために自分たちが何をすべきかを考えていく経営が求められていると思います。環境と経営を今まで以上に合致させていきます」と語ってくれました。

三谷剛平プロフィール

1978年12月27日生まれ。高知市出身。家業で建設会社を経営していたことから、農業土木の科目のある東京農業大学へ進学。卒業後、大林組に入社。現場監督を務める。28歳のときミタニ建設工業に入社、30歳で代表取締役社長に就任。