約20年前、
古紙を利用し始めた段ボール業界は
大きな転換期を迎える
タケナカダンボールは、平らな紙と波状の紙が貼り合わされた段ボールシートを仕入れ、印刷や切れ込みを入れて段ボール箱に加工する「製函メーカー」です。段ボールの利点は軽くて、折り畳めて持ち運びやすいこと。研究を積み重ねて品質も向上。強度もあり破れにくくなっています。また、20年ほど前までは原料にバージンパルプが使われていましたが、現在ではリサイクルされた古紙が使用されています。
この古紙の出現が段ボール業界に大きな影響を与えました。段ボールは資源ゴミとして家庭や企業から回収されます。その回収率は約95%以上(出典:全国段ボール工業組合連合会)にも達します。回収された段ボールは、再び段ボールへと生まれ変わります。古紙の利用率は90%以上。古紙以外のパルプも地球環境や生物多様性に配慮された木材原料を使っているそうです。
「環境に優しい段ボールは、今や生活を取り巻くさまざまなシーンで利用されています」と竹中専務。「野菜を詰める箱はもちろん、通信販売で送られてくる商品も段ボールに入っていますよね。あまりにも身近にありすぎて、皆さんが気づかないものでも段ボールが使われているものがありますよ」と続けます。

段ボールは燃えるゴミではない。
無限の可能性を秘めたリサイクル商品だ
「段ボールには無限の可能性がある」というのは、梶田さん。2011年の東日本大震災で、段ボールが使われているのを見て、いずれ高知県も南海トラフ地震に襲われて必要になってくると思い、段ボール製のベッドを商品化しました。商品化された「暖ダンルーム ベッドⅡ」は3トンもの重さに耐えられ、組みたてに工具も不要、両面に撥水加工も施した優れものです。
その他にもプライバシーを守るための段ボール製の間仕切りの商品化も行っています。「暖ダンルーム 間仕切りⅠ」は、103cmの高さがあり、この高さは一定のプライベートが守られ、人の存在も確認できる高さとして設定したそうです。「飛沫、飛散防止の為、140cmの高さにした「暖ダンルーム 間仕切りⅡ」に、大人気のアニメの主人公兄妹の着物の柄を印刷した商品を、2021年6月いっぱい高知市のオーテピアにある高知みらい科学館に展示しています。興味がある人はぜひ。」と竹中専務。
また今年は、多くのスポーツ競技が新型コロナウイルスの影響によって無観客で実施されました。高知ファイティングドッグスの試合も同様でしたが、梶田さんは人型になった段ボールサポーターを、高知大学の地域協働学部と共同で開発。「全部で1500枚作った段ボールサポーターが相手チームの客席まで占領し、ファイティングドッグスの選手たちは勇気づけられ、相手チームは驚いていました」と笑いながら話してくれました。段ボールは紙が素材なだけに湿度や温度の影響を受けやすい。目まぐるしく変わる環境の中でも安定した製品を作れるのは従業員の皆さんのスキルが高い証です。また、いち早く4色印刷機を導入し、デザイン面で要求の高い段ボールの製作も可能にしています。これもまた、4色印刷機を精密に操作できる従業員の能力が高いからこそ。「スキルの高い従業員こそ、わが社にとっては大きな財産。新しい可能性が追求できるのも、この技術力があってこそなんです」と、竹中専務と梶田さん。梶田さんは「リサイクルできる段ボールは持続可能な資源として優秀であり、今や私たちの生活にはなくてはならないものです。そんな段ボールをさらに必要なものとしてもらうために、さまざまな発想を考えるのが楽しくて仕方ありません」と言います。
リサイクルできる
段ボールを通じて
「エコ」の大切さを教える
「子どもたちに、環境に優しい段ボールの良さを理解してもらうために工場見学を受け入れたり、出前授業に出かけていきます」と竹中専務。工場見学などのときに子どもたちに伝えているのは、段ボールは100%再生産可能な天然素材で、万が一、リサイクルされずに放置された場合でも最後は土に還ることや、アルミ缶やペットボトルなど、リサイクルできるものの中でも、段ボールは圧倒的にリサイクル率が高い(95%以上が回収)ということ。「段ボールを通して、未来に生きる子供たちに「リサイクル」や「エコ」の大切さを知ってもらうことが、地球を守ることにつながります。それが段ボールの担う一番大切な役割ではないでしょうか。」
と竹中専務は話します。お土産として段ボールでできた筆箱などをプレゼントすると子どもたちは目を輝かせるそうです。
「私たちの仕事はまず野菜を入れる箱を作って、一次産業をサポートできる商品づくりからスタートしました。それは、今も昔も相手を思いやる気持ちが、商品開発をしていく原動力になっています。私達は、高知の中で『あって良かった』と言われる企業を目指しています」と、二人は力強くうなずきました。
竹中利文さんプロフィール
室戸市出身。大学を卒業後、半年間東京に残るが、帰高して株式会社タケナカに入社するも、宮崎県にある段ボールを製造する会社に出向。当初3年間の予定が、タケナカがダイドードリンコと室戸海洋深層水を使った清涼飲料水の共同開発を始めたことから1年半で高知に戻る。2012年にタケナカダンボール が分社する際に代表取締役専務に就任。
梶田宙さんプロフィール
愛知県出身。大学を卒業してすぐに、当時設立したばかりの高知ファイティングドッグスの入団テストを受けて合格。内定をもらっていた就職先を蹴って、10年間選手としてプレー。その後、球団社長、取締役を歴任。一方、タケナカの社長のお嬢さんと結婚。利文さんとは兄弟となり、2019年4月から現職に付き、段ボールの新しい可能性を追求する毎日だそうです。
