身近な服をリサイクルする
循環型社会を目指して

 まだまだ着ることができる衣類や、少し修繕すればまだ着られるもの、あるいは、流行で無くなったからとタンスの肥やしになっている衣類を持ち寄って、欲しい人に持って帰ってもらうという、衣類を循環させる取り組みをしているのが高知大学の環境サークルESWIQ(エスウィック)。その活動についてお話をお伺いしました。

あなたと一緒に地球に優しく
なりたいとの思いから

 ESWIQとは”Eco Sympathy With Q” の略だそうですが、なぜ「Q」かというと、Qで始まる英単語の次の文字は必ず(一部例外もありますが)「u」の文字が続きます。uは「you」ということで、Qは「いつもあなたのそばにいるよ」という意味合いになり、ESWIQは「”Q” の心を忘れずに、みんなで一緒に地球を思いやろうよ!」という意味になるそうです。

 SNSに書き残してあったサークル紹介を見てみると、サークルが発足したのは2006年11月。2010年ごろの活動内容は・四国四県ゴミ拾いイベント「jump」、服循環イベント「服もってけおいてけ市」、緑のキャンパス、エコネコ、朝倉まちづくりの会参加 、その他となっています。

 この中で、現在まで10年以上続いている活動が服循環イベント「服もってけおいてけ市」です。現在、サークルの代表を務める松田桜生(さくらお)さんは「服もってけおいてけ市は、12時から15時ごろまでの間、使わなくなった服を持ってきてもらい、汚れて着られない服と、着られる服を分別して、着られる服を並べて、気に入った人に持って帰ってもらいます。お金は発生しません。まさに循環のサイクルです」と話してくれました。

 服もってけおいてけ市は高知大学の朝倉キャンパスや、物部キャンパス、そしてこうち男女共同参画センター「ソーレ」などで実施されます。松田さんは「同じ高知大学でも朝倉キャンパスは大学に通う学生が多いのですが、物部キャンパスは野菜なども販売して、家族連れや地域住民など学外の人が多く訪れてくれるので、活動を知ってもらえるいい機会になります」と話す。

 この物部キャンパスと同じように、外部との接点になっているのがソーレでの活動です。ここでは、服もってけおいてけ市の活動を共にしてくれる仲間ができました。それが「こうち男女共同参画ポレール」の皆さんです。

ESWIQとポレールで服もってけおいてけ市を共同開催

 ポレールとはフランス語で北極星のこと。ソーレができるとき、どんな施設にしたいのかなどの話し合いに集まった有志が、ポレールの元になったそうです。

 そんなポレールは、ソーレの受付事業を業務委託で受けていますが、この業務委託には2つの付帯事業に取り組むことが条件に付いていました。1つは男女共同参画推進の取り組み、もう1つが、なるべくたくさんの人にソーレを知ってもらう取り組みです。この取り組みの中でESWIQとポレールは出会い、一緒に服もってけおいてけ市を実施するようになりました。大学生と活動を共にすることを松本和子さんは「世代は違いますが、そんなに教えることはありません。私はもともと環境問題などに取り組んでいたので、服をいらない人からいる人に橋渡しができるこの市は、自分たちにも参考になります。若い人たちは古い服も、違う服と組み合わせて、見事な着こなしを見せてくれる。新鮮な考え方に刺激を受けますし楽しい」と話してくれました。そんな松本さんに、松田さんは「自分たちの親世代と同じ位なので、見守ってもらっているだけで安心。自分たちのやりたいように展示や分別をさせてくれるので感謝です。ありがとうございます」と、松本さんたちに信頼を置いているのが伺えます。

 松田さんはサークル活動に参加して「今まで以上に廃棄物やリサイクルについて考える機会も増えました。環境活動はどうなっていくべきか、自分ができることは何かを考え、服以外にもリサイクルの考えを広げる、いいきっかけでした」と話す。そんな松田くんがESWIQの活動に参加したのは3年生のとき。現在も続けている他のサークル活動で、先輩から紹介してもらったのが入部のきっかけになったそうです。

コロナ禍で厳しい状況の中、
次代につなぐ方法を探る

 新型コロナウイルス感染症の影響により、今年はソーレでの開催を6月と12月に予定していましたが、4月ごろには早々に中止要請がありました。また、昨年は香南市役所の方に協力してもらい、野市小学校でも開催しましたが、今年はそれも開催できるかどうか未定です。加えてESWIQの部員は、現在4年生の松田さんただ一人。サークルの存続も危うくなっています。そんな状況に「コロナの影響で1年生は入学当初から大学に来ていません。2年生や3年生など、同じ学部で環境のことを考えている後輩は多くいるんです。でも、活動の場がないから、誘えない状況なんです。とにかく、僕が卒業するまでになんとか情熱で後輩を捕まえるしかないと思っています」と松田さん。松本さんも「この活動ができていないのは残念で仕方がない。やり方を変えてみるなど考えてみましたが、なかなかいい取り組みがありません」と、悔しそうです。

 人との接触が制限されている中で「ネットを活用してみては」というアドバイスをくれる人もいる。しかし松田さんは「中には服をかっさらうように持っていったり、こちらが意図していないことをする人もいますが、やはり、ちゃんと服を見てもらって、ちゃんとしたやりとりがしたいですね。本当に服が欲しい人は、服の選び方も慎重だったり、服を大切に着てくれる意識が会話に表れてくるので分かります」と言います。松本さんも「以前、この市で持っていった子ども服を、自分の子どもたちが着て、もう役割が終わったからと持ってきてくれる人もいますが、服をみると、とても大事にしてくれていたのが分かります」と話してくれました。

 最後に松田さんは「僕らの活動の背景を分かってもらえた上で、“もってけおいてけ”にたくさん参加してもらい、循環のサイクルができればいいと思います。そのためにも、活動を知ってもらう機会があればなぁと思います」と熱く語ると、松本さんも「学生に頼るだけでなく、大人と組んで何かできないかな。ゆくゆくは日常的にリサクイルの輪ができるといいですね」と、優しく微笑みながら話してくれました。

松田桜生さんプロフィール

福岡市出身、高知大学農林海洋科学部4年生。ESWIQでのサークル活動は3年生になってから、それまではスポーツを楽しむサークルに所属し、その活動は今も続けている。趣味はサウナ、ラーメン大好き。なんとか半年で後継者を見つけ出したい。

松本和子さんプロフィール

大阪出身。結婚して高知へ。最初の活動は生協の理事。環境対策の取り組みは1995年ごろから。地球温暖化防止のための京都会議にまつわるイベントや会議にも参加。高知県地球温暖化防止活動推センターのセンター長を経て2年間海外へ。帰国後、以前から活動していたこうち男女共同参画ポレールに復帰し活動を続けている。