美味しい南国野菜を
食べて欲しくてこの店を

産直野菜を販売する店の横、生姜畑に囲まれたはたけの食堂copanを経営する岡林さんご夫妻。「VEGETABLE KITCHEN」として地元南国市の野菜を、しかも「ハネ」と呼ばれる傷物や規格外のものを、美味しく、楽しく演出して提供してくれています。その、野菜に対する思いは何なのかお話をお伺いしてみました。

南国野菜を美味しく楽しく
食べられる「はたけの食堂copan」

 高知市弥右衛門から香美市土佐山田町中組まで連なる国道195号あけぼの街道。この街道沿いにあり、生産者直送の地元の新鮮野菜を販売する「あけぼの街道 なの市」の駐車場北側に『はたけの食堂copan』はあります。2年前の2018年7月、オーナーの岡林雅人さんが奥さんの理佳さんと2人でcopanをオープンさせました。

 copanはフランス語で“仲間”や“友だち”という意味。雅人さんは「野菜を提供してくれる地元の生産者も仲間、訪れてくれるお客さまも友だち、そして一緒に働いてくれるスタッフも仲間なんだという意味を込めて名付けました」と名前の由来を教えてくれました。

 店は10時30分から14時までがビュッフェランチタイム。週ごとに変わる肉料理、または魚料理、そしてトマトカレーの中から一品注文して、このメイン料理が来るまでにビュッフェに並ぶ野菜料理の数々を楽しんでもらうシステム。

 14時から16時までは卵・牛乳、小麦粉は一切使っていない野菜のソルベ(シャーベット)やスイーツをいただくカフェタイム。そして週末の金曜日・土曜日・日曜日の17時30分以降は夕暮れバルと称して、野菜を中心としたお料理と一緒に、アルコールが楽しめる時間となっています。

ハネ野菜を美味しく再就職させてギルトフリーに

さまざまなスタイルのグルメが楽しめるcopanですが、一貫して拘っているのが“野菜”。特に地元野菜をふんだんに使ったビュッフェは人気が高いそうです。ところが雅人さんは、この店を始めるまでは野菜は苦手だったそう。「家で料理を担当するときも野菜の入っていない肉料理を中心に作っていました。野菜に抵抗があったんです」と話す。「ところが南国市の野菜は調理がいらないほどおいしいんです。それだけに手間を加える野菜料理が楽しくなりました」と素材の良さに気付かされたそうです。

 一方、身近に農家を営んでいる叔父さんがいたことから、野菜作りの厳しさも知っていました。「野菜を作っていたら、本当に規格外や傷の入った“ハネ野菜”がたくさんできるんです。そんな野菜は自分たちで食べたり、近所に配って消費しますが、消費しきれないものはそのまま畑でたたいて肥料にします」と野菜作りの厳しさを見てきました。

 傷ついたところをちょっと除いたら十分料理に使用できるハネ野菜。「このハネ野菜の再就職先を掲げられたら」という気持ちで始めた野菜料理のビュッフェ。「うちの料理は洋風の味付けだから野菜が苦手な人も結構食べられるし、レシピを聞きにくる人もいるほどなんです。安い材料だけど、お客さんに喜んでもらえる料理ができるから、ハネ野菜を使っている罪悪感もない。まさにギルトフリーですよ」とニッコリ。

野菜ロス防止につながる、
美味しい料理を全国に発信予定

 そんな雅人さんのお気に入りが、ハネがたくさん出るネギで作ったディップソース。名付けて「ネギベーゼ」。簡単に調理できる上に、肉でも魚でもどんな料理にも合う万能ソース。もう一方で人気が出てきたのが週に2回焼くベーグル。生地にチリメンジャコとチーズ、焼き芋と黒ごまなど高知県産の素材を練り込んでいて、子どもにも食べさせたい一品になっています。

 しかし、そんな人気のcopanにもコロナ禍の影響は大きかったそうです。お客さんが来店せずに、家でご飯を食べる機会が増えたことから、一時期テイクアウトを行なっていましたが、来客の減少分を補うには至らなかったそうです。そこで、現在準備中ですが、2020年中に実現したいと取り組んでいるのが「おうちでcopanシリーズ」というネット通販。電子レンジなど簡単な調理でcopanの美味しい料理を食べてもらえるよう、いろいろな料理をギフトやセットに考案中。もちろん人気のベーグルもセットで販売を予定しているそうです。とても忙しくて現在スタッフ募集中だそうです。

 取材に応じてくれた雅人さんは、料理を始めたころから「小さくてもいいからいつか自分の店を持ちたい」と願い続け、奥さんの理佳さんも子育てに奮闘しながら、その夢に近づけるようにカフェでアルバイトをしたり、古民家カフェを経営するなど、夢の実現に向けて寄り添ってきました。「2人で喧嘩はしょっちゅうします。でも、すぐに切り替えて仕事に集中します」とは理佳さん。頑張る2人はエネルギーに満ち溢れ、明るい。これからも南国市の美味しい野菜を使った料理の数々で、私たちを楽しませてくれることでしょう。その取り組みは地産地消のカーボンオフセットや、野菜ロスの防止へと、自然につながっていきます。

岡林雅人さんプロフィール

高校を卒業後、RKC調理師学校で料理を学び、高知県内のホテルやレストランで修行。このころから自分の店が持ちたいという夢は持っていた。その後、一度料理の世界を離れサラリーマンを12年ほど続ける。しかし、夢を忘れることができずにいたところに、現在の場所が借りられると知り一大決心をしてはたけの食堂copanをオープンさせる。

岡林理佳さんプロフィール

高知理容美容専門学校を卒業後美容師に。サラリーマン時代の雅人さんに出会い結婚。その後、子育てに奮闘しつつも、ご主人の夢に理解を示し「いつかお互いをパートナーにして小さな店を」と、カフェでアルバイトをしたり、古民家カフェの経営にも携わった。