今、大きな環境問題として
話題のマイクロプラスチックのもと
軽くて丈夫で携帯しやすいペットボトル。そのため清涼飲料水などに多く使われ、自動販売機に入っている商品の約半数にこのペットボトルが使われているのをよく見かけるほどです。けれど、海や川に行けばポイ捨てされたペットボトルはすぐに見つかります。自然界の中で分解しきれないペットボトルは今、マイクロプラスチックとして大きな環境問題を引き起こしています。
毎日、朝夕の散歩ごとにペットボトルやプラスチックゴミ、アルミ缶、紙パックなどを回収するいくらちゃん。飼い主の新谷信行さんが、スーパーマーケットに張り紙をしていた「里親募集」のチラシを見て、すでに飼っていた先輩ネコの「遊び相手になってくれたらいいな」と思いもらい受けてきたそうです。犬種はボストンテリア。そのブサ可愛い容姿も新谷さんにとってはお気に入りでした。
いくらちゃんのお家は、すぐ目の前に大海原が広がる国道沿いの「ノブ・サーフギャラリー」。ここは、若い頃から全国大会にも出場していたというサーフィン好きの新谷さんが、長年の夢をかなえて15年前に開店したサーフショップです。店内にはボードや専門のグッズが所狭しと並べられています。

いくらちゃんを見習って
サーファーたちもゴミ回収を
朝は6時ごろから、夕方は「早く連れて行ってよ」とせがみ、午後3時ごろに散歩に行くいくらちゃん。最初のころは浜辺で流木や石、そしてときにはペットボトルを投げて、咥えたら帰ってくる、という遊びをしていたのが、いつのころからか、ペットボトルや空き缶など、いわゆるゴミを持って帰る習慣のようになっていました。ペットボトルなどがなければ、あるまで探し、咥えることができるまで帰らないそうです。
そんなゴミは浜辺から国道に上がる階段の横にしっかりと置いておきます。また、いくらちゃんの姿を見て、サーファーや海を訪れた人もゴミを回収してくれるようになりました。集まったゴミは町役場の方でしっかり回収してくれます。
若いときからこの海を見てきた新谷さんは「海岸のゴミもいっとき増えていたんだけど、黒潮町や四万十市の人が頑張って回収して行ってくれるから美観は高まってきていると思いますよ。それに、サーファーのみんなもしっかりゴミは持ち帰ってくれます」と教えてくれました。「この海岸のゴミのほとんどはここで放置されたんじゃなくて、川上から流れてきたものや、漂流物として海を漂ってきたものなんです」と表情が少し厳しくなりました。
地元の子どもたちにも
この海を好きになってもらいたい
新谷さんのノブサーフギャラリーは、サーフィン未体験の人にも、その魅力を感じて欲しい、この海を好きになってもらいたいと、3年前から地元の小学校を対象に「幡多サーフ道場」と「ザ・グリーンルーム」と合同で、サーフィン教室を開催しています。
取材に訪れた日は、地元の黒潮町立南郷小学校の5〜6年生を対象に教室を開催。午前9時に浮津海水浴場に集合。簡単な説明を聞いた後、まずは全員で海岸のゴミ拾いです。わずか20分ほどの時間でしたが、大きなビニール袋にいくつものゴミが回収できました。新谷さんは「2週間ほど前に2回続けてサーフィン教室をして、そのときも同じようにゴミを回収したのに、またこんなにゴミがあるなんて…」と残念そうでした。
サーフィン教室に一緒に訪れていた坂本恭美子校長先生にお話をお聞きすると「地元の綺麗な海で、地元の人たちと一緒になって、海岸を美化したり、サーフィンを楽しんだりと子どもたちも喜んでいます。南郷小学校でサーフィン教室を実施するのは初めてですが、コロナ禍で子どもたちにも何かしてあげられたらと思っていたので、地元の海を好きになり、そして守っていく気持ちを感じてもらういい体験になったと思います」と嬉しそうに話してくれました。
この体験を通じて子どもたちが、いくらちゃんや先輩サーファーのように、黒潮町の海を好きになり、守り、美化に取り組み始める日は近いのかもしれません。
いくらちゃんプロフィール
犬種:ボストンテリア。年齢:12歳。性別:メス。新谷信行さんの経営する「NSGノブ・サーフギャラリー」が自宅。お気に入りは店内3カ所に敷かれたマット。この上で昼寝するのが極上の幸せ。
新谷信行さんプロフィール
中村市生まれ。若いころから幡多の海とサーフィンを愛し、数々の大会にも出場。15年前に長年の夢だった自身のサーフショップ「NSGノブ・サーフギャラリー」を、入野海岸が目前に広がる黒潮町浮鞭に開店。サーフグッズの販売やレンタル、サーフィン体験スクールを実施し、ブログ「nobusurfの波乗りブログ」でサーフ情報やイクラ日記を発信している。高知県サーフィン連盟会長。
