高知県を幾筋も流れる美しい河川を
守るために立ち上がる

 米穀・鶏卵等食糧品全般及びペット用品フードの卸売、米・食糧品の宅配事業、ペットショップの経営、食堂・物販・産直複合店の経営、鶏卵GPセンターの運営など、人間にとって大切な「食」の販売を中心に幅広い事業を手掛ける高知食糧株式会社。私たちの郷土を守る環境に対する取り組みにも熱心で、高知県と協働した川づくり事業に基づき「高知県清流保全パートナーズ協定」を締結し、清流保全活動に取り組む県内の環境団体などを支援しています。

研がずにおいしく炊ける
「まんま炊っきー」が
取り組みのきっかけ

 高知食糧の環境への取り組みのキーワードになっているのが、研がずに炊け、「まんま炊っきー」の愛称で知られるBG無洗米の存在です。「BG」とはBran(ブラン=ヌカ)、Grind(グラインド=削る)の頭文字のこと。通常ではご飯を炊く前に米を水で研ぎ、表面のヌカを落とします。この米を研いだ「とぎ汁」には、リンやチッ素が含まれ、私たち人には直接の害はありませんが、下水処理をしても完全に取り除くことは難しく、川や海に流されてしまいます。このリンやチッ素が、赤潮やアオコ、ヘドロなどを生み、水質汚染の原因になっているのです。

 BG無洗米は、米粒の表面についたヌカを取り除き、表層のうまみ成分を残しているので、米を研ぐことなく、おいしいご飯が炊けます。しかも、水で研ぐ必要がないため節水にもつながり、とぎ汁が出ないので川や海を汚すこともありません。

 取締役食糧事業部長の下川正男さんは「普通精米は、同じ5kg入りでもお米を研ぐ際に流れてしまうヌカが約150g含まれますが、BG無洗米ではそのヌカが含まれないため、5kg分しっかりお米の粒が詰まっていることになります」と教えてくれました。

 管理本部総務課の北添春菜さんからは「無洗米は美味しくないというイメージを持たれる方もいらっしゃいますが、むしろうまみ成分がきれいに残っているので食味も良く、研がなくていいので家事の時短にもつながりますし、特に冬の寒い日には主婦の強い味方です」と消費者目線での感想も伺えました。

 現在では高知食糧が販売する米の約51%をBG無洗米が占め、その販売量は年々増加しています。販売開始当初から、CMの放映などで無洗米の認知度向上を目的とした販促活動を行うなかで、BG無洗米の環境配慮性を地域社会への貢献につなげたいという想いがかたちとなったのが、高知県と締結した「清流保全パートナーズ協定」。BG無洗米の売上1kgあたり1円を県内の清流保全活動に取り組む団体に寄付し、高知の美しい川を未来へとつないでいこうという取り組みでした。

1kg売れたら1円を、
河川を守る清流保全団体に寄付する

 高知食糧がBG無洗米の販売を始めたのは、東洋ライスから専用の精米機を購入した平成11年2月以降のこと。そして、高知県と最初にパートナーズ協定を結んだのは、平成23年度でした。協定締結のきっかけを下川さんは「特に高知には四万十川や仁淀川などきれいな河川がたくさんあります。弊社の経営理念にも掲げている、「地域社会への貢献」というビジョンと、BG無洗米の節水効果や水質保全などの環境配慮性が一致したことが大きいですね。弊社にできる地域への貢献のあり方、自然の守り方ということで始まりました」と話してくれました。

 さらに、北添さんは「実際に寄付させていただいた団体の代表者の方からも、イベントの運営者側として、環境への配慮から生まれた資金によって環境に良いことに取り組めることが嬉しいとおっしゃっていただくこともあります。」と実際に寄付を受ける団体との一場面も教えてくれました。

 下川さんは「弊社の活動は特に河川を限定しているわけではありませんので、本当に高知県内全域から、自分たちの自慢の川に対する誇りや愛着が感じられる地域性あふれる多様な申請があります。その中で、清流保全という本来の趣旨に合っているかなど、丁寧にすべての申請を審査させてもらっています。」と話してくれました。

美しい高知の川を
代々受け継いでいくため、
今できることを

 寄付をした団体のイベントに高知食糧のスタッフも出向き、河川の清掃やBG無洗米のPR活動をすることもあるそうです。「団体の皆さんと一緒に手を組んで、地球環境を、高知の川をキレイにしようと一緒に汗をかいて、草を刈り掃除をする中で、共有した目的に対する達成感もありますし、地域住民と触れ合えるところがうれしいですね」と下川さん。

 「自分たちが参加することで、環境活動を通じて、わが社の理念にある地域貢献が目に見える形で実施されていることを実感できるのがこの活動の魅力の一つです」とは北添さん。

 例年、清流保全活動への寄付には10〜14件ほどの応募申請があります。しかし、2020年度は新型コロナウイルスの影響で実施するイベントが中止になるなど、6〜7件の応募にとどまりました。下川さんは「この活動をもっと知っていただいて、寄付金を活用いただくことで、この取り組みを継続的に続けていきたい」と話します。3年に一度の締結で、平成23年度からはじめてきた取り組みは9年が経過し、2021年4月8日には4期目、10年目の高知県とのパートナーズ協定締結を予定しています。また、高知食糧ではこの2月に全社員の名刺を製造工程で大量の水や木材を使う従来の紙の名刺から、石灰石を原料とした名刺に変更しました。紙の名刺と比較して100枚あたり約10Lの節水につながるこの名刺は、SDGs(持続可能な開発目標)にもつながります。

 下川さんは「私にも子どもがいますが、自分たちが昔遊んだ川は本当に自然にあふれていました。そういった川がだんだん失われていっている気がして、それを次の世代、また、その次の世代につなげていくためには、守っていかなければならない宝物の一つだと思いますので、私たちが今できることをやっていくことが、一つのつながりになっていくのではと思っています」と話してくれました。

 北添さんは、大学を卒業後に環境NGOのスタッフとして、地球温暖化の影響で国土が海の中に沈んでしまうことが懸念されているツバルで植林活動や環境教育をしてきた経歴の持ち主。北添さんは「ツバルの人たちは毎日ほとんど自給自足の生活をして、環境破壊に全くといっていいほど加担していないにも関わらず、その最初の被害者になってしまう。その理不尽な構図を止めたいという想いで活動していました。大人である自分たちが便利さや快適さを追求した結果として、次世代にその負荷を被らせることがあってはいけません。ありのままの美しい川をそのまま未来の子どもたちに継承していく。そのために取り組むこの清流保全活動でもその想いはツバルにいた時と同じくするところです」と教えてくれました。

高知食糧株式会社

1953(昭和28)年4月、いの町にて有限会社山﨑商店を設立。1962(昭和37)年7月に高知食糧株式会社に社名変更。1991(平成3)年5月に、本社および伊野工場を現住所に移転。1999(平成11)2月、東洋ライスからBG無洗米の精米機を購入。2011(平成23)年9月、高知県と清流保全パートナーズ協定を締結。2021(令和3)年4月、清流保全パートナーズ協定を4期目の更新予定。